高師四郎は亡き主君の遺言にしたがい、高野山に隠れ住む忘れ形見の花若丸を探しています。しかし新田方の武将の子である花若丸を、敵である足利家の郎党たちも追っています。一計を案じた四郎はわざと狂人のふりをして、周囲の目をあざむきながら探し歩いています。
女性の衣裳を羽織る四郎を見てからかう里の子たちをやりすごし、ようやく見つけた花若丸に、主君から家再興の夢を託されたことを告げ、高野山から逃げようとします。そして、追ってくる兵士たちを軽々とあしらった後、ゆうゆうと去ってゆくのでした。
高貴な身分の女性が着る豪華な衣裳での四郎の派手な登場。里の子たちとの軽快で楽しいやりとり。花若丸と四郎主従の情感ただよう対面。追手との巧妙な渡り合い……など、荘重な義太夫と華麗な長唄の掛け合いで、劇的に展開する『高野物狂』は、花柳流の代表作のひとつです。